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猿(さる)

猿

○撮影場所:京都市伏見区 御香宮神社拝殿 (蟇股)
○制作年代:寛永2(1625)年
親猿が小猿に食べ物を与えている。組み合わせは栗。
・猿の姿:猿百態

■概要
哺乳綱サル(霊長)目でヒトを除いたものの総称。
十二支の九番目。方位は西南西、時間は午後四時前後、旧暦七月を司る。

■特徴
◎装飾彫刻ではニホンザルの姿が多く、見間違えることはない。
・烏帽子をかぶる猿もいる(日吉神社系)
・絵画ではテナガザルの場合がある
・組み合わせ:馬(守り神として) 実のなる植物
・関連:「鳥獣戯画」の動物 十二支

■来歴
装飾としては弥生時代の銅鐸に描かれた姿が最初と言えようか、古墳時代の埴輪や猿石という物もある。
陰陽五行による思想から馬の守り神とされ、、絵巻物などを見ても厩(うまや) に猿が描かれている。これの最たるものが日光東照宮の厩にある欄間彫刻「猿の一生」である。
また、比叡山のふもと、日吉神社では神使とされ、近くにある西教寺では建物の いたるところに猿の彫刻がされている。
庚申信仰にも欠かせないものであり、庚申塔には猿が刻まれている。

■意味
馬に関するところの近くにある場合は馬の守り神、日吉神社系のところにあるときは 神使となるが、これ以外で見るときは十二支の一体ということが多い。

出典・参考

・『論衡』「物勢第十四」(『新釈漢文大系』68)
申は猴なり、(中略)ビ(けもの偏に爾)猴は金なり。

・『本朝食鑑』「獣畜部」(『ワイド版東洋文庫 本朝食鑑』5)
猴は、山にも市にも多くいて、飼主に養われ、人々が常によく見ているもの である。飼主はよく馴らし教えて、遊戯をさせ、烏帽子を着け、彩衣を被せ、扇を 翻し、竿に上らせ、舞曲のかたちをまねさせ、猿まわしと呼ぶ。春の初め、猿まわし を招いてなぐさみにするが、馬を牧う家では最もこれを賞しており、よく馬疫が 避けられるとされる。

・『和漢三才図会』「寓類 恠類」(『ワイド版東洋文庫 和漢三才図会』6)
本性、犬とは嫉み合い、また触穢を忌む。血をみれば愁い、念珠をみるのを悪む。 これは生を喜び死を悪むという意で、それで猿を嘉儀のものとして玩弄する。伝えるところでは猴は 山王の神使であるという。

・『人と動物の日本史1 動物の考古学』設楽博己「縄文人の動物観」(吉川弘文館)
(サルを象った土偶などの例から)「サルはヒトに近い形相から、縄文時代に呪術的な役割を帯びた動物と考えられていた ことがわかる。」

・高藤晴俊『図説社寺建築の装飾』
・『日本・中国の文様事典』

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