○撮影場所:富山県高岡市 伏木曳山祭本町山
○制作年代:天保12(1841)年
実の色が金色になっているが、葉の形から葡萄と判断できる。
実の色は基本的に紫。
■概要
ブドウ科ブドウ属のつる性落葉低木。ペルシャ原産。
日本にも種類は違うが「海老鬘(えびかずら)」というものがあり、古くからあった。
装飾彫刻では、栗鼠との組み合わせが定番。
■特徴
・実は小さい珠が連なる形
・葉は五つに裂ける
・蔓がある(葡萄唐草文などは特に)
・組み合わせ:栗鼠(りす)
・類似:楊梅(やまもも) 枇杷(びわ)
類似したものとの見分け方のポイントは、葉の形。葡萄の場合は、五裂。
■来歴
銅鏡である「海獣葡萄鏡」にみられるが、日本に本格的に入ったのは奈良時代。
このときに使われたのはデザイン化されたものである。
しかし、平安時代になると装飾の場から姿を消す。時を経て、室町時代末期の南蛮貿易
とともに復活。栗鼠とともに写実的な意匠が用いられる。
なお『古事記』ではイザナギノミコトが髪飾りを投げ、それが葡萄(エビカズラ)と
なった話が見られる。
■意味
西洋ではキリストの血の象徴、またワインの原料となることから酒、実が連なってなること
から豊穣、蔓がまとわりつくことから生命力を表す。
日本では豊穣の意味が強いか。ただ、室町末期以降の意匠では物珍しさもあるかもしれない。
『古事記』上巻(倉野憲司 校注『古事記』岩波文庫 1963年)
(イザナギノミコトが黄泉比良坂を逃れている時に)ここに伊邪那岐命、黒御鬘を取りて
投げ棄つれば、すなはち蒲子(えびかづらのみ)なりき。
・高藤晴俊『図説社寺建築の彫刻』