○撮影場所:東京都葛飾区 柴又帝釈天(題経寺)帝釈堂
○制作年代:大正末期〜昭和9(1934)年
■概説
「提婆達多品」では悪人成仏と女人成仏の二つが説かれる。ここでは前者の部分。
とある国の王が法華経を求めていた。そのためならば何をしてもいいと思っていた。
そこで阿私仙人という仙人が現われ、どんなことでもやるならば法華経を教えようと王に言った。
王は喜び、仙人のために身を尽くし千年(千載)経ってしまっても飽きることがなかった。
実はこの王こそが釈尊の前世であり、仙人は仏敵とされた提婆達多の前世だったのである。
釈尊は提婆達多こそ悟りに導いてくれた友であり、提婆達多もまた成仏する、と示したのである。
・『法華経』提婆達多品第十二(岩波文庫『法華経』中)
「誰かよくわがために大乗を説かんものなる。吾は当に身を終るまで、
供給し走使すべし」と。時に仙人あり、来りて王にもうして言わく「われ。大乗
をたもてり、妙法蓮華経と名づく。もしわれに違いたまわずば、当にために宣説
すべし」と。王は仙のことばを聞きて、歓喜し、踊躍し、即ち仙人に随って、
もとむる所を供給して、菓を採り、水を汲み、薪を拾い、食を設け、乃至、
身をもって牀座となせしに、身心は倦ことなかりしなり。時につかうること
千歳をへて、法のための故に、精勤し、給侍して、乏しき所なからしめたり」と。