○撮影場所:東京都葛飾区 柴又帝釈天(題経寺)帝釈堂
○制作年代:大正末期〜昭和9(1934)年
■概説
この彫刻では二つの話があり、ここでは左下、常不軽菩薩の話を紹介する。
常不軽菩薩は経典も読まず、人に向かって「貴方は仏に成れる」
とひたすら言い続けて礼拝するだけであった。これは自分自身を大切にせよ、仏性を
発揮せよと言うメッセージであった。
ところが世の中には色々な人がいるもので、その行為に対して悪口を言ったり
石を投げたりする人もいた。それでもこの菩薩はこの行為を続け、遂に成仏したのである。
実はこの常不軽菩薩は釈尊の前世であり、迫害したものは釈尊の弟子たちであった。
つまりは「逆縁」、最初は仏の教えを非難していた者たちが、後には仏の教えを実行するように
なった(その逆で初めからすんなりと教えを受け入れることを「順縁」という)という
話である。
・『法華経』常不軽菩薩品第二十(岩波文庫『法華経』下)
かくの如く、多年を経歴して、常に罵詈らるるも、瞋恚をおこさずして、
常にこの言を作せり「汝は当に仏となるべし」と。この語を説く時、衆人、或いは
杖木・瓦石を以ってこれを打擲けば、避け走り、遠くにとどまりて、猶、高声に
唱えて言わく「われ敢えて汝等を軽しめず、汝等は皆当に仏と作るべし」と。
それ、常にこの語をなすを以っての故に、増上慢の比丘・比丘尼・優婆塞・優
婆夷は、これをなづけて常不軽となせるなり。