○撮影場所:栃木県日光市 日光東照宮陽明門
○制作年代:寛永13(1636)年
橋が架かっており、水の流れが見える。そこが虎渓。
そこを渡った3人。笑っている。
■物語
慧遠(334〜416)は中国廬山の東林寺に住んでおり、俗世との関わりを
絶つために麓の虎渓を渡らないと誓っていた。ある日、友人である陶淵明と陸修静
がやってきて、慧遠は虎渓まで見送ることにした。ところが話が盛り上がり、気づいた時には
3人とも虎渓を渡ってしまい、大笑いした。
これは三酸吸聖にも通じることであり、仏教(慧遠)・儒教(陶淵明)・道教
(陸修静)の一致、つまり真理はひとつということを暗示しているといえる。
なお、能の演目にも「三笑」というものがあり、ストーリーは同じである。
■図像
・林守篤『画筌』(正徳2【1712】年自序、享保6【1721】年刊)
・謡曲「三笑」(野上豊一郎『解註謡曲全集4』)
四季にも同じ、葉色の常磐木の、松菊を愛し、かなたこなたへ足もとは泥泥泥泥
と苔むす橋を、よろめき給へば淵陸左右に、介錯し給ひて虎渓を遥かに出で給へば、
淵明禅師にさて禁足は、破らせ給ふかと、一度にどつと、手をうち笑つて、三笑の昔と、
なりにけり。
・正徳4(1714)年『絵本故事談』巻之六 慧遠法師(『江戸怪異綺想文学大系』3)
廬山の慧遠法師は陸修静陶淵明の二人に訪はれて、虎渓の橋の禁足を忘れ、大に笑ひし
ことあり。世に是を三笑といふ。