○撮影場所:
東京都大田区御嶽神社本殿
○制作年代:天保2(1831)年
『平家物語』「文覚荒行」より、滝修行の場の部分。
左が矜羯羅童子・右が制多迦童子。
■概要
不動明王は眷属が多くいる(八大童子とも、三十六大童子とも)
が、その中でも有名なのがこの二童子である。
矜羯羅童子は白身、優しい顔、合掌、もしくは蓮華を持つ(写真では蓮華と巻物)。
制多迦童子は赤身、怒りの表情、手には金剛棒を持つ。
今回紹介するものは文覚との組み合わせだが、これは『平家物語』巻第五「文覚荒行」から。
・『平家物語』巻第五「文覚荒行」(梶原正昭他校注『平家物語二』岩波文庫 1999年)
(文覚が21日の滝行を試みて)三日といふに、文覚つひにはかなくなりにけり。滝つぼをけがさじとや、
みづらゆうたる天童二人、滝のうへよりおりくだり、文覚が頂上より、手足のつまさき、たなうらにいたるまで、
よにあたたかにかうばしき御手をもッて、なでくだし給ふとおぼえければ、夢の心ちしていき出でぬ。
「抑いかなる人にてましませば、かうはあはれみ給ふらん。」ととひたてまつる。「われはこれ大聖不動明王
の御使に、矜羯羅・制多迦といふ二童子なり。「文覚無上の願をおこして、勇猛の行をくはたつ。ゆいてちからをあはすべし」
と、明王の勅によッて来れる也」とこたへ給ふ。