○撮影場所:富山県富山市 八尾曳山祭今町山
○制作年代:慶応3〜明治7(1867〜1874)年
場面はゼン子が鹿の皮を着ていた所を襲われそうになったところ。
その他図版:氷見祇園祭南上町山
■物語(中国二十四孝)
ゼン子(ゼンは炎にリ)の父母は眼を患ってしまい、眼には鹿の乳が良いということを知り、鹿の群れの中に
紛れ込もうとして鹿の革を着て山に入る。
そこを狩人に本物の鹿と勘違いされ、撃たれようとしたところ、
ゼン子は狩人になぜこんなことをしているのかを語る。
ゼン子の行おうとした孝行に狩人は心打たれたという。
・中国二十四孝 ゼン子(日本古典文学大系『御伽草子』)
ゼン子は親のために、命を捨んとしける程の、孝行成人なり。其故は、
父母老て共に両眼を煩し程に、眼の薬なるとて、鹿の乳を望めり。ゼン子もとより
孝なる者なれば、親の望をかなへたく思ひ、すなはち鹿の皮を着て、あまたむらがりたる
鹿の中へまぎれ入侍れば、狩人これを見て、実の鹿ぞと心得て、弓にて射んとしけり。
其時ゼン子、「是は実の鹿にはあらず、ゼン子と云者成が、親の望をかなへ度思ひ、偽て
鹿のかたちとなれる」と、声をあげて云ければ、狩人驚て其故を問ば、ありすがたを語る。
されば孝行の志深故に、矢をのがれて帰たり。抑人として鹿の乳を求ればとて、
いかでか得さすべきなれ共、思ひ入りたる孝行の、思ひやられてあはれなり。