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猪(いのしし)

猪

○撮影場所:富山県射水市 新湊曳山祭紺屋町山(飾金具)
○制作年代:19世紀

■概要
哺乳綱偶蹄目イノシシ科。
日本では神話の時代から獰猛なイメージが強く、山の神に比された。
また、農作物を荒らすことから、狩猟対象にもされ、肉は山鯨と 称し、食用となっていた。
十二支の内十二番、北北西の方位、午後十時前後、旧暦十月を司る。

■特徴
◎装飾彫刻では十二支の一体であることが多いので、ほぼ見間違えない。
・上向きの牙(角はない)、細い眼
・体型はずんぐりとしている
・猪の姿:猪百態
・関連:「鳥獣戯画」の動物

■来歴
獰猛(どうもう)なイメージが強く、『古事記』ヤマトタケルの話では伊吹山 の神として登場し、タケルに最後の試練を課す。
仏尊では摩利支天の使い、乗り物として有名(乗らない場合もある)。
しかし、これ以外に見かける機会は少なく、十二支の12番目として登場するのが 最も見かけるパターンではなかろうか。

出典・参考

・『論衡』「物勢第十四」(『新釈漢文大系』68)
亥は水なり、その禽は豕なり。

・『古事記』中巻(倉野憲司 校注『古事記』岩波文庫 1963年)
(ヤマトタケルが伊吹山へ向かった時に)「その山に騰(のぼ)りましし時、白猪山の辺に逢へり。 その大きさ牛の如くなりき。ここに言挙げして詔りたまひしく、『この白猪に化(な)れる は、その神の使者ぞ。今殺さずとも、還らむ時に殺さむ。』とのりたまひて騰りましき。 ここに大氷雨を零(ふ)らして、倭建命を打ち惑はしき。(この白猪に化れるは、その神の使者にあらずて、 その神の正身に当たりしを、言挙によりて惑はさえつるなり。)」

・『人と動物の日本史1 動物の考古学』設楽博己「縄文人の動物観」吉川弘文館)
「イノシシは、縄文時代において肉獣の最右翼であったと同時に、他の生物 にくらべて多産で生命力が強いことが特別視された。」

・高藤晴俊『図説社寺建築の装飾』

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