○撮影場所:富山県南砺市 城端曳山祭東耀山(神像 全身の姿はこちら)
○制作年代:安永3(1774)年
打ち出の小槌、宝物が入った袋、満面の笑み、大国頭巾、足元は米俵。
典型的な大国天のイメージが凝縮されている。
■概要
密教における大黒天と神道における大国天が習合した姿。
密教における大黒天は三面六臂の姿が胎蔵曼荼羅に描かれる。
また、一面二臂の姿は筑紫観世音寺などに残されており、静かな怒りの表情を
出している。持物として袋がある。
神道における大国天はオオクニヌシのことであり、やはり袋を持つ。
また、『古事記』では「因幡の白兎」や鼠に救われる話が出ている。
仏教における大黒天は戦勝などを司っていたが、特に福徳が強調されるよう
になり、今知られる姿が室町時代には成立する。七福神の一人。
■特徴
・ふくよかな体
・大国頭巾をかぶる
・小槌と袋を持つ
・米俵に乗ることがある
・但し、密教の世界の大黒天は姿が全然違う
・象徴として宝珠がある
・大黒天の姿:大黒天百態
・関連:日本神話
・『大国舞』(新日本古典文学大系55『室町物語集 下』岩波書店 1992年)
いかにも背低く、顔は藍染めなんどのごとくなるが、頭巾うち着て、袋を肩にかけ、手には大きなる槌を持ち、
太く肥えたる男の。後には、鼠のやうなる怪しきかたちなるもの、色々の兵具を持ち、
十二人うづくまり居て、「物申さん」と言ふ。
・同上
そもそも、大黒天神は帝釈三十二将のその一人、仏法守護の天人なり。天竺にては
摩訶迦羅天と申す。今、日本にては大黒天神と申すなり。色黒く、背低く、面に愛敬
ましまし、心に慈悲深くして、大きに肥え太り給ひ、身重げに、大なる袋を肩に掛けて
ましませば、かりそめの戦などにも何の用にもたち給ふまじきとこそ見え給ふに、
三面八臂の大黒となりては、身に甲冑を鎧ひ、鼠の上に俵を敷き、これを鞍と定めて、
駆け出で給ふ時には、第六天の魔王幾千万競ひかかるといへども、難なく打ち勝ち給ふとかや。
・正徳4(1714)年『絵本故事談』巻之二 七福神(『江戸怪異綺想文学大系』3)
大黒天は大国主の命又大己貴尊とも号す。素戔嗚尊の御子なり、天下の民人及び畜類のために
もろもろの病を療するの方を定め給ふ神なり。今世に図する所の色黒く全体円にして槌を把り嚢を
担ふものは、昔時最澄祈願によつて比叡山の穀堆の上に出現ありし形とかや。