○撮影場所:栃木県日光市 日光東照宮東回廊(蟇股)
○制作年代:寛永13(1636)年
猫の彫刻とくればこれというくらい有名な彫刻。
しかし、猫の装飾彫刻はそんなにいない。
■概要
哺乳綱食肉目ネコ科。古代エジプトで初めて家畜化され、以降世界中で家畜となっている。
日本では昔話などでよく登場するが、妖術を使ったり、化けて出てきたりと、不思議な力
を持つ動物として現れることが多い。
■特徴
◎装飾彫刻では見間違えることはない。また、数も少ない。
・組み合わせ:牡丹
蝶
・関連:「鳥獣戯画」の動物
・猫の姿:猫百態
■来歴
日本には野生の猫がいたが、家畜化された猫は中国伝来とされ、もともとは経典を
鼠の害から守るために伝えられたという。平安時代にはペットとなり、『源氏物語』や
『枕草子』にも登場する。
身近に思われがちだが、妖怪猫又や、妖術を使うなど、猫は異質の存在として見られた
感がある。また、十二支にも入っておらず、そんな意味では遠い。
装飾彫刻では日光東照宮の眠り猫があまりにも有名。その他にも見る機会があるが、
この知名度に勝る猫はいない。
日光東照宮奥院に通じる回廊に写真で紹介している猫の彫刻がいる。組み合わせは牡丹、装飾彫刻で
眠る姿というのはほぼなく、また猫の彫刻も少ないことから、非常に有名である。
この猫が一体何を表わしているのか?この彫刻のちょうど裏側には羽ばたいた雀の彫刻が彫られている。
猫と雀の組み合わせの装飾では、雀が猫に喰われるという意匠があり、これはその逆。つまり平和な世の中
という意味がある、と高藤晴俊氏は参考文献で述べている。
・高藤晴俊『図説社寺建築の彫刻』