○撮影場所:京都市下京区 西本願寺唐門
○制作年代:寛永年間か
■概要
モデルはライオンであるが、東洋で独自の進化を遂げた伝説の動物。
獅子でも通じるが、中国伝来ということで「唐獅子」と呼ばれる。
獅子舞、狛犬の片割れなど、見かける機会は多い。
装飾彫刻の中でも定番中の定番。
■特徴
◎四足、カールした体毛、角無しで見分けがつく。
・ネコ科の感じがある(もともとはライオン)
・彩色はさまざま
・組み合わせ:牡丹
・唐獅子の姿:唐獅子百態
・関連:「鳥獣戯画」の動物
■来歴
中国伝来であるが、もとはライオン。だから西洋(シルクロード)伝来といってもよい。
法隆寺所蔵の「獅子狩文錦(国宝)」の獅子
は輸入されたものとはいえ日本における獅子の最古の例といえよう。これはまさにシルクロード
伝来(ペルシャ)といえるものである。
仏教にも所縁のある霊獣であり、「獅子坐」といえば仏尊の座るところ、「獅子吼」といえば
仏尊の説法のことを指す。文殊菩薩が乗っているのも獅子である。
「鳥獣戯画」には勇猛な獅子が2体描かれており、また「平家納経」にも見ることができる。
牡丹が装飾として使われる(中国では南宋以降)とともに結び付けられ、「百獣の王」
と「百花の王」である唐獅子牡丹の組み合わせができる。「唐獅子牡丹」といえば「桐に鳳凰」や
「梅に鶯」などとともに最もメジャーな意匠といえる。
その勇猛さは、武士にも好まれた。狩野永徳「唐獅子図屏風」は桃山時代を代表する作品であり、
あまりにも有名。
図像としては獅子が牡丹に戯れる、獅子の親子、獅子の球遊び、獅子同士のけんか、
獅子の子落とし、謡曲「石橋」のモチーフなどがある。
中国清朝では武官二品の印とされた。
■意味
意匠の王道としてとにかく使われているが、魔除け、聖域守護の意味が
一番強いだろう。今は「狛犬」と一括されているのも元は「獅子・狛犬」であり、
聖域守護の意味がある。
獅子の球遊びは獅子の雌雄が戯れあい、毛が球になり、そこから獅子の赤子が生まれるとされた(双獅戯球)。
謡曲「石橋(しゃっきょう)」を表現している場合もある。
・『今昔物語集』巻第5の14「獅子猿の子を哀れび、肉を割きて鷲に与えたること」
(岩波新日本古典文学大系32『今昔物語集1』)
この獅子心の内に思う様、「我はこれもろもろの獣の王なり。さればもろもろの獣を護り哀ればむ。」
・謡曲「石橋」(『解註謡曲全集6』)
牡丹の花房匂い充ち満ち、たいきんりんの獅子頭、打てや囃せや牡丹芳、黄金の蘂、現われて、
花に戯れ枝に伏し転び、げにも上なき、獅子王の勢い、靡かぬ草木もなき時なれや、
万歳千秋と舞い納めて、獅子の座にこそ、直りけれ。
・正徳2(1712)年『和漢三才図会』巻第三十八 獣類 獅子(ワイド版東洋文庫『和漢三才図会』6)
『本草綱目』に次のようにいう。獅は百獣の長である。西域に生息する。状は虎に似ているが小さい。
金色のむく狗のような黄色で、頭は大きく尾は長い。青色のもいる。銅の頭、鉄の額、鉤の爪、鋸の牙、
垂れた耳、盛りあがった鼻をもち、目の光は電のようで、吼える声は雷のようである。
・高藤晴俊『図説社寺建築の装飾』
・『日本・中国の文様事典』
・『中国五福吉祥図典 禄 喜』