○撮影場所:富山県富山市 八尾曳山祭西町山
○制作年代:明治初期
黄石公は装飾として使われるときは必ずといってもいいほど
張良とのセットである。
馬、老人、中国風人物で張良らしい人物がいればセットとして黄石公になる。
・黄石公の姿:黄石公百態
■概要
張良との逸話で出てくる仙人。日本では『史記』とそれを題材にした謡曲
「張良」で浸透したといわれており、人気も高かった話といわれている。
装飾に使われる場面は、張良と黄石公(老人)が橋で出会い、黄石公が川に靴を投げ捨て、張良に
拾わせようとするところ。黄石公は馬上の場合もある。見ての通り片足は靴を履いておらず、
その靴は張良が手に持っている。
この後、黄石公から兵法の秘伝を教えてもらうことになる。
・謡曲『張良』(野上豊一郎編『解註謡曲全集6』)
心を見んと石公は、履いたる沓を馬上より、遥かの川に落とし給えば張良続いて飛んで下り、流るる沓を取らん
とすれども所は下ヒの巌石にあしもたまらず早き瀬の、矢を射る如く落ち来る水に、浮きぬ沈みぬ流るる沓を取るべき
ようこそなかりけれ。
不思議や川波立ちかえり、俄かに川霧立ち暗がって、波間に出づる蛇体の勢い紅の舌を振り立て振り立て、張良を
目がけてかかりけるが、流るる沓をおっ取り上げて、面も振らず、かかりけり。
張良騒がず剣を抜き持ち、蛇体にかかれば、大蛇は剣の光に恐れ、持ちたる沓をさし出だせば、沓をおっ取り剣を収め、又川岸に
えいやと上り、さてかの沓を取り出だし、石公に履かせ奉れば、石公馬より静かに下り立ち、さるにても汝、善き哉善き哉
とかの一巻を取り出だし、張良に与え給いしかば、即ち披き、ことごとく拝見し秘曲口伝を残さず伝え、さてかの大蛇は
観音の再誕汝が心を見んためならば、今より後は、守護神となるべしと大蛇は雲居によじ上れば、石公遥かの高山にあがり、
金色の光を虚空に放し、たちまち姿を黄石と現わし、残し給うぞ、ありがたき。
・関連:能の人物