○撮影場所:富山県富山市 八尾曳山祭西町山
○制作年代:明治初期
張良は装飾として使われるときは必ずといってもいいほど
黄石公とのセットである。
龍に乗り、靴を持つ中国風の人物がいたら、張良と判断してもいいだろう。
・張良の姿:張良百態
・関連:能の人物
■概要
張良(?〜紀元前186)は前漢の高祖(劉邦)に仕えた軍師、政治家。
漢王朝成立に多大な力を発揮し、軍事・政治に関わらず知略に長けた。
装飾彫刻に使われる場面のほとんどは張良の師、黄石公との出会いの場が使われる。
この場面は立身出世の場として用いられ、装飾彫刻でも頻繁に見かける題材である。
当然『史記』が基礎となるが、実際は謡曲「張良」で取り上げられたものが
題材になり、浸透したと言えよう。
■特徴
・ほぼ黄石公とのセットで、その場合は靴を持ち、龍に乗る
■物語
張良を試そうとした黄石公は馬上から靴を川に投げる。靴を取りに張良は川に飛び込むが、
そこには蛇(龍)がおり、張良に襲いかかってきた。
張良はそれにひるまず剣を抜き、蛇は屈服。蛇に乗って張良は川から出、黄石公に靴を渡す。
黄石公は秘伝の兵法書を渡し、たちまち黄色い石と化した、という。
・謡曲「張良」(野上豊一郎『解註謡曲全集6』)
心を見んと石公は、履いたる沓を馬上より、遥かの川に落とし給えば張良続いて飛んで下り、流るる沓を取らん
とすれども所は下ヒの巌石にあしもたまらず早き瀬の、矢を射る如く落ち来る水に、浮きぬ沈みぬ流るる沓を取るべき
ようこそなかりけれ。
不思議や川波立ちかえり、俄かに川霧立ち暗がって、波間に出づる蛇体の勢い紅の舌を振り立て振り立て、張良を
目がけてかかりけるが、流るる沓をおっ取り上げて、面も振らず、かかりけり。
張良騒がず剣を抜き持ち、蛇体にかかれば、大蛇は剣の光に恐れ、持ちたる沓をさし出だせば、沓をおっ取り剣を収め、又川岸に
えいやと上り、さてかの沓を取り出だし、石公に履かせ奉れば、石公馬より静かに下り立ち、さるにても汝、善き哉善き哉
とかの一巻を取り出だし、張良に与え給いしかば、即ち披き、ことごとく拝見し秘曲口伝を残さず伝え、さてかの大蛇は
観音の再誕汝が心を見んためならば、今より後は、守護神となるべしと大蛇は雲居によじ上れば、石公遥かの高山にあがり、
金色の光を虚空に放し、たちまち姿を黄石と現わし、残し給うぞ、ありがたき。