○データ
・場所:埼玉県秩父市 秩父神社拝殿・本殿
・年代:天正20(1592)年、徳川家康による
・彫刻は天和年間(1681〜1684)のものか?転用の可能性も。
・埼玉県有形文化財
秩父神社は武蔵国成立以前、知知夫国の時代から有った神社と言われ、今も秩父総社の
別名を持っています。中世、妙見信仰が入り、秩父妙見宮として隆盛。しかし明治時代の
神仏分離により秩父神社となりました。例祭は秩父夜祭です。
さて、社殿は天正20(1592)年、徳川家康による寄進。いわゆる権現造の社殿
です。これを疑わないならば、関東の装飾彫刻建築では古いものになります。しかし、秩父神社
社報「柞乃森」6号(平成4【1992】年)には天和年間(1681〜1684)に彫刻が
付加されたとあり、また『埼玉県指定文化財調査報告書 第1集』には今の拝殿の彫刻は本殿から
転用されたと推測されており、新旧入り混じっている可能性があります。
彫刻は全体的に大振り。ほとんどが小壁に彫刻されているので、ややもすれば障壁画が
彫刻と化したような姿です。虎や鳳凰と言った瑞獣、鐘離権や琴高などの仙人、恵比寿や大黒
など、バリエーションが豊富です。
諸説入り乱れているので彫刻の年代は判断しにくいのですが、大振りの彫刻は古様を
留めているといっていいと思います。